Jake Zyrusの自伝/告白本「歌姫の仮面を脱いだ僕」内容解説と読みどころ

2008年にフィリピンで歌手デビュー、2009年にはデイヴィッド・フォスターのもとで全米デビューを果たし翌年リリースされたアルバムがアジア人アーティスト初となるビルボードアルバムチャート10位となる大ヒットとなり日本はもちろん世界中の注目を集めたシャリース。彼女はトランスジェンダーであることを公表、性別適合手術を受け2017年より男性シンガー ジェイク・ザイラス(Jake Zyrus)として再出発しました。
2018年にはジェイクが地元ののど自慢大会のコンテスト荒らしからやがて女性シンガー・シャリースとして世界を席巻、その後自身の性自認について苦しんだ末、男性シンガーとして生きる決断をした現在までを克明に語った半生記「I AM JAKE」を上梓、シャリースとして活躍していた頃メディアに公表していたストーリーとは真逆の真実を語った本書はフィリピン国内で大きな注目を集めました。
一年半後の今、その「I AM JAKE」がついに日本語版「歌姫の仮面を脱いだ僕」として発売となりました。

「I AM JAKE」は昨年暮れにNHK BS1スペシャルで3回にわたり放映・再放映されたドキュメンタリー「シャリースとジェイク〜僕は歌姫だった」の下敷きとなった本で、番組で触れられなかった話題、深く掘り下げられなかったエピソードなども詳しく記されています。
BS1スペシャルのドキュメンタリーはこの本の「予告編」的役割となっています。

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歌姫(シャリース)の仮面を脱いだ僕(ジェイク)

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歌姫(シャリース)の仮面を脱いだ僕(ジェイク)

目次
CHAPTER 1 Awakening 目覚め
CHAPTER 2 Mommy Dearest ママ愛してる
CHAPTER 3 Kontesera コンテストガール
CHAPTER 4 Making of Charice スター誕生
CHAPTER 5 Daddy パパへ捧ぐ
CHAPTER 6 Music and Me 音楽と僕
CHAPTER 7 Love is Love is Love 愛がすべて
CHAPTER 8 Little Big Man 小さな巨人

Salamat 感謝
Life After Life 思い出。そして今。

内容解説:
この本は2018年10月にフィリピンで出版されたジェイク・ザイラス(Jake Zyrus)の自伝「I AM JAKE」の日本語翻訳版です。
みなさんがよく知る世界的な女性シンガー、シャリースとしての活躍はもちろん、貧困にまみれた幼少期やトランスジェンダーであることを公表し男性シンガー ジェイク・ザイラスとして活動する決断、決して語られることのなかった家族による虐待の真相や父親への深く強い愛情など彼の半生の全てが自身の口から素直な言葉で語られています。
そして現在のジェイクの音楽に対する思いやトランスジェンダーとして受けた性的少数者への激しいバッシングと理解者の心温まるサポートも脚色することなく記されています。

シャリースのファンの方なら、いかにして自分の才能に目覚め、世界を席巻するスターにまで上り詰めたのか、典型的なフィリピンの貧困家庭からいかにして這い上がったのかというストーリーはとても新鮮で興味深いものでしょうし、セリーヌ・ディオンやホイットニー・ヒューストンらのセレブリティとの交流など彼にしか体験できなかったエピソードを披露してくれています。
また、5歳の頃から自身の性自認について悩み、女性シンガーとして知名度が上がるにつれて本当の自分を自身の中に隠し続けていたジェイクの苦悩は日本でも多くの人が関心を寄せるトピックです。ジェイクはそのことも正直に語っています。決して飾らず、自身の弱い部分、ひょっとすると賛否が巻き起こるのではないかと思われる部分も包み隠さず綴られていて、強く生きること、ありのままに自分自身の人生を生きることがいかに幸福なことであるかを教えてくれています。性自認だけでなくいろいろなことに不安や苦悩を持って日々生きている我々全員が大切な何かを得られる半生記です。

このようにスターシンガーである歴史とトランスジェンダーであることで経験した様々な出来事が本書の大きな柱となっていますが、もう一つ本文全体を通して流れているフィリピンのこと、フィリピン人らしさ、フィリピンの貧困という部分も見逃せません。ジェイクの生い立ちを書き綴る中で情景描写として出てくるフィリピンは、主題ではないからこそ必要以上にセンセーショナルに書かれたりステレオタイプな舞台装置が出てくるわけではありません。しかし幼少期の暮らしの様子や学校でのこと、大人との関わり、成人してからのプロのシンガーとしてのエピソードのなかにそこはかとなく書かれているフィリピンの風景はそれを現実の生活の場として生きてきたジェイクが描く本物のフィリピンです。
フィリピンの貧困については多くの優れた文献により詳しく伝えられていますが、当事者が自分の言葉で語った生のフィリピンがそのまま日本語になることは少ないのではと思っています。 スターシンガー・シャリース、トランスマン・ジェイクザイラスのライフストーリーと共にフィリピンのこともよくわかる一冊となっています。
本書にはフィリピンにしかないものや食べ物、習慣などが多く出てきます。注が多めに添えられていますのでぜひ参考にしていただきましたらと思います。

それから、ジェイクの人生でほとんど一緒に暮らしたことのない父親のことが一つの章を立てて描かれています。これはシャリースとして活躍していた頃プレス向けに、暴君の父親から虐待を受け彼から逃げていたと公表していましたが、真実は真逆のものでした。
本当はジェイクはパパのことが大好きで、今でも鮮やかに彼の胸に刻み込まれている幼い頃父親と過ごした短くも幸せな日々を是非書いておきたい、ファンの方に本当の父親を知ってもらいたいというジェイクの願いが込められています。

最後に、この本の大部分はいわゆる「語り下ろし」形式で書かれています。読んでいくとあたかもジェイク本人があなたの隣に座って自分の人生を話してくれているような雰囲気を持っています。
読み終わった後、フィリピン人シンガー、シャリースとジェイクのことを理解してもらうと同時にいつもポジティブに生きる一人のフィリピン人の友達ができたような気持ちになっていただけましたら幸いです。

9歳の頃のジェイク(シャリース) コンテストガール時代

16歳全米デビュー直前セリーヌ・ディオンとマディソンスクエアガーデンでデュエットを披露

2010年デイヴィッド・フォスターのワールドツアーでマニラに凱旋したジェイク(シャリース)
ホイットニー・ヒューストン主演の映画ボディーガードメドレー

2017年ジェイクザイラスとしてレコーディングしたバラード(テレビドラマ主題歌)

2019年自身のソロコンサートにて (Never Enough)