本日のお奨め~デュエットソングパート7「Kiss (Never Let You Go)」

■2010年代のフィリピンポップスは彼らの登場からはじまった!新進気鋭の天才ソングライターチーム・ボーカルデュオThyro & Yumiのオリジナルバラード「Kiss」

Kiss (Never Let Me Go)を収録しているThyro & Yumiのデビューアルバム
Thyro & Yumi
フィリピンポップスは、過去の名曲や名演を十分に咀嚼しながら少しずつ新しいテイストを加えていくといった、どちらかといえばコンサーバティブでステディな流れが主流となっていますが、時々エポックメイキングなアーティストやサウンドが出現します。
2011年にリリースされたデュエットアルバム「Thyro & Yumi」はOPM界にとって正に画期的な出来事だったと思われます。ソングライターチームでもありボーカルユニットでもあるThyro & Yumiはこのアルバムをリリースした頃はまだフィリピンの大学に籍を置く学生でした。本日ピックアップしたバラードの「Kiss」は70年代~80年代にかけてのアメリカの黒人アーティストの流れを汲んだもので、その完成度の高さと、様々な音楽を深く追求し吸収している様に衝撃を受けましたが、このアルバムに収録されているミディアム~アップテンポの楽曲も黒人のHip Hopにロック的な要素をうまく盛り込んだ新しい感覚のサウンドで、その後多くのフィリピン若手シンガーがリリースする作品にもThyro & Yumiのスタイルに影響を受けた跡が見て取れます。
アルバムに収録された自身の楽曲や最近のプロデュース作を聴いていると彼らが目指しているのは新しいR&Bの可能性を見出すことのようで、アメリカでもない、アジア一般でもない、独自の「Pinoy R&B」というジャンルを確立しつつあり、バラード作品はどちらかといえば少ないですが、ここに紹介した「Kiss」は彼らがオーソドックスなソウルミュージックを「地」として持っている(影響された)ということを如実に物語っています。アルバムのヒットやその後のOPM界での大活躍を予想していたかどうかは判りませんが、一番最初に1曲だけこのようなバラードをフィーチャリングシングルとして持ってきた部分にも彼らのセンスの良さが窺えます。
冷たい感じもする管理されたエレクトリックなビートにアヴァンギャルドなロックテイストを大胆に使用しながらもソウルフルな生のボーカルの感触を損なわないThry & Yumiの楽曲、EDM(エレクトリックダンスミュージック)全盛の今のミュージックシーンをリードする天才コンビの名盤を是非!