ABS-CBN一極集中の流れに一石を投じるか？Tarsier records (ターシャレコード) 他

2018年10月20日

フィリピンを代表する女性シンガー　レジーン・ヴェラスケス-アルカシッド(Regine Velasquez-Alcasid)が業界2位のGMA recordsから電撃的にABS-CBN(Star music)に移籍したニュースがフィリピンのマスコミ各社で伝えられていますがレジーンに先立って夫のオギー・アルカシッド(Ogie Alcasid)やジョナ(Jona)、ジャヤ(Jaya)、カイラ(Kyla)、ジェッサ・ザラゴザ(Jessa Zaragoza)など人気も実績もあるアーティストが既に大勢GMA→ABS-CBNへの流れています。
これは音楽業界自体の利益スタイルの変化(CDを製作しアルバムプロモーションのためのテレビ出演やライブなどを行う従来のスタイルが崩れている)に伴い、従来型を維持しつつ変化にも対応できる企業としての体力を持った最大手ABS-CBNにアーティストがその存在をかけて移行しているもので頷ける点も多々ありますが、どうしても同じ戦略のもとで行われるプロモーションではサウンドも似通ったものになりがちで、いわゆるファンの「飽き」を誘うことによる業界自体のシュリンクも危ぶまれるのではないかと思っていますが、いつの時代も独自路線を歩もうとする存在はいるもの。
もちろん以前から、テレビを中心としたGMAとABS-CBN(Star music)という２大巨頭、そして外資系を含む数社のメジャーレーベルに距離を置くインディーズレーベルや独自のサウンドでメジャーシーンに挑戦する魅力的なレーベルやアーティストも存在していました。

そんな中、今最も注目しているのが新興レーベルの「ターシャ・レコード(Tarsier records)」です。
ターシャはフィリピン中部ボホール島に生息している世界最小のメガネザルの愛称で、小さな体に大きな目が特徴、大ヒット映画「E.T」のモデルとなったことでも知られています。
このレーベルはまだ全貌が明らかになっていません(オフィシャルサイトも現在製作中となっています)が、チャートにポツポツとヒット曲が顔を出すようになってきました。
先週(10月13日付)のシングルチャートに20位初登場していた人気シンガー　モイラ・デラ・トーレ(Moira Dela Torre)の最新シングル「Knots」もターシャ・レコードからの新曲。モイラはこの春Star music(ABS-CBN)からアルバムをリリース、ドラマや映画の主題歌を含むこのアルバムは大ヒットとなり一躍フィリピンで最も人気のポップシンガーとなりました。そんな彼女がターシャ・レコードからリリースしたニューシングルはアルバムに収録されていたオーソドックスなフィリピンポップスとは一味違ったアーバンテイスト溢れるミディアムチューンで明らかにStar musicのサウンドとは一線を画するもの。アーティスト契約の詳細は判りませんがメジャーレーベルの人気アーティストがインディーズから意欲的な新作をリリースしていることはとても好感度の高いことでした。
このターシャレコード、この春にもガリー・バレンシアーノの娘キアナ・バレンシアーノ(Kiana Valenciano)が超かっこいいシングルをデジタルリリースして注目しました。この曲もヒットチャートに登場しましたが、トップ３には入れませんでした。今20位にランクインしているモイラの新曲もどのくらいチャートを上がれるかわかりません。OPMのメインストリームのサウンドではないのでひょっとしたら上位は難しいのかもしれませんがこういったサウンドがチャートを賑わせているフィリピンのポップスシーンはまだまだ注目に値するサウンドが飛び出してくると思われ、目が離せない状況となっています。

ターシャレコードの前にも新興R&BレーベルのFlip music (Viva records傘下)やJay R主宰のHomeworkz recordsなど海外のファンからも高い評価を得ている楽曲を多く生み出したレーベルが存在しています。
ターシャも「アーバンOPM」と形容できる内容のサウンドで、アメリカのソングライターも積極的に起用、２１世紀のフィリピンポップスに新しい方向性を作りそうな予感がしています。

ターシャ・レコードからの注目シングル2曲
「Knots / Moira Dela Torre feat. Nieman」

この春チャートを賑わせたキアナ・ヴァレンシアーノのめちゃかっこいいアーバンOPM シングル「Misfits」