「人気シンガー、ジュリス(Juris Fernandez)誕生秘話と、いいサウンドを追求する音楽家」

日本人でフィリピンの芸能界に大きな功績を残したプロデューサーの渡辺一弘さんが2020年1月4日に急逝しました。
私も会うたびに楽しいお話を聞かせて頂いておりました。これからプロデュースするアーティストの予定もあった渡辺さんですので残念でなりません。
お付き合いを思い出しているうち、数年前に渡辺さんと渡辺さんが発掘したアーティストについてブログに書いたことに思い当たりました。

日本では活躍が大きく報じられることはなかった渡辺さんですが、少しでもお元気だった頃を偲んでいただけましたらと思いますので、功績の一部としてこちらに再掲いたします。
文章はブログにアップした時のまま加筆・修正しておりません。「W氏」としておりますが、これが渡辺さんです。
なお、M.Y.M.Pのアルバム紹介をしておりますが、全て売り切れのため画像のみ掲載、リンクは貼っておりません(TJ Monterdeのみリンクあり)。

タイトル:「人気シンガー、ジュリス(Juris Fernandez)誕生秘話と、いいサウンドを追求する音楽家」
アップ日時:2017年12月26日

18日から24日までフィリピンに出張していました。
予定では22日に帰国の予定でしたが23日に重要なアポイントメントが入ってしまったので24日に帰国便を変更しました。

さて、今回も色々とエキサイティングな体験ができたフィリピン出張でした。

裏話的な話題が多く全部ネット公開できないのですが、日本でも人気の高いアコースティックデュオM.Y.M.Pの元ボーカルで現在はソロシンガーとしてStar music / ABS-CBNで活躍しているジュリス・フェルナンデス(Juris Fernandez)の話題を。

ご存知の通りM.Y.M.Pは2003年にアコースティックトリオバンドとしてレコードデビュー、デビューアルバム「Soulful Acoustic」に収録されたオリジナルソングでデビューシングルのA Little BitがFMで話題となり、二人組になった2005年にリリースされた2部作となるセカンドアルバム・サードアルバム(VersionsとBeyond Acoustic)が大ヒット、一躍フィリピン中のリスナーを虜にしました。

ダバオ生まれのジュリスは大学でマニラに出てきたとき、チンがリーダーだったローカルバンドM.Y.M.Pにソロ活動のため脱退したボーカル ニーナ(Nina)の後釜として2001年に加入しています。

この頃先輩のニーナがアイドルだったジュリスはニーナの影響をモロに受けたR&B系のボーカルスタイルのシンガー(!)で、小さなナイトクラブやバーなどで演奏活動をしていました。

ローカルステージで活動していたジュリス/M.Y.M.Pは斬新なアイデアとセンスで人気アーティストを数多く世に送り出していた敏腕プロデューサーに見出されレコードデビュー、リリースするアルバムはどれも人気となり、知名度も全国区となったジュリスはM.Y.M.P脱退後もStar musicの看板シンガーとして活躍しています。

今ではソロシンガーとしてM.Y.M.P時代を知らない若いリスナーからも人気のジュリスですが、名もないナイトクラブで歌っていた彼女の才能を最初に発掘・開花させたのは実は日本人プロデューサーのW氏。

W氏は日本のメジャーレーベルのプロデューサーから80年代にフィリピンに移り、数多くのヒット作・ニューアーティストを生み出してきました。

アーティストの才能を見つける嗅覚と時代の空気を的確に読み取ってミュージックビジネスと音楽という芸術・創作活動のバランスをうまく取ることのできる敏腕プロデューサーなのであります。

ジミ・ヘンドリックスがアイドル(!)というギターのチンとニーナの影響でソウル・R&B系のボーカルスタイルだったジュリスによるポップバンドM.Y.M.PをアコースティックバンドとしてデビューさせたのはW氏のアイデア。

エレキギターを片手にレコーディングセッションに来たチンにアコギ持って来てと言ったところアコースティックギターを持っていなかった(驚・笑)チンは友達に借りて来てレコーディングに臨んだそうです。(^^;

その後もチンはアコースティックギターもフィーチャーしつつ現在のM.Y.M.Pで作品を作り続けていますのでこのポップ・ロック系からアコースティックへの路線変更を提案したW氏との出会いはチンの可能性も大きく広げたようです。

そしてデビューアルバムとなる2003年リリースのSoulful Acousticはなんとアナログレコーディング!ポップス界でもほぼ100パーセントデジタル化されていた当時、アナログレコーディングはかなりの冒険。経費や時間の面から(?)渋るレーベル(Ivory music&video)を説得しアナログ用のレコーディングスタジオで完成したこのアルバムはラジオのAirPlayで人気となりました。

失敗したら最初からやり直し、後から補正や修正のできないアナログレコーディングはバンドにとってもプレッシャーのかかる作業だったと思いますが、W氏はその環境がアーティストの魅力を最大限に引き出し、且つサウンドクオリティの高い作品が出来上がる、しかも売れる(笑)と確信したのでしょう。

氏のプロデュースの元、M.Y.M.Pはその後リリースするアルバムはことごとく大ヒット、ジュリスはこの後ソロシンガーとしても人気となりました。

M.Y.M.Pのデビューアルバム「Soulful Acoustic」

フィーチャリングシングルのA Little Bitを・・・

このアルバムについて、「アナログレコーディングのメジャーアルバムはフィリピンではあれが最後ではないか」・・・と氏は語っています。

エンターテインメント・ビジネスとしての音楽業界に身を置きながら「いい物」を作ることに対するこだわりをしっかり持ちつつそれを多くのリスナーに支持される形(売れる形)で作り込んでいくW氏が語ってくれる話は、一音楽ファンの私にはとてもエキサイティングで楽しいものです。

今回の出張でお会いした際には芸術としての音楽とエンターテインメントとしての側面やデジタル化がもたらした現状と将来の展望など興味深いお話に聞き入っていた私です。

私が拙い表現で書くと少し堅苦しい感じになってしまいますが?この辺の事情をさらっとスマートに話してくれるW氏、かっこいいのであります。

M.Y.M.Pのデビューアルバム「Soulful Acoustic」は現在入手困難となっていますが、ジュリス在籍時代のM.Y.M.Pのアルバム5枚をワンパッケージにした廉価版セットにそのまま収められています。一番の大ヒット「Versions」と「Beyond Acoustic」ももちろん含まれています。

お求めはこちらで・・・

M.Y.M.P / Anthology – A decade after 5disc collection

人気の高いVersionsとBeyond Acousticの2部作を1組にした2枚組セットもあります。

M.Y.M.P / Versions&Beyond 2CD

アルバムVersions & Beyondから、スモーキーマウンテンのヒット曲「Kailan」のカバーを・・・
あの日にかえりたいや卒業写真など初期のユーミンを思わせる切ない雰囲気です。

ちなみに日本でも人気の高いKZ Tandinganの彼氏で前作のアルバムからカットされたシングルがフィリピンのヒットチャートの1位を獲得する人気となったシンガー・ソングライターTJ モンテルデ(TJ Monterde)もW氏に発掘された一人。

ミンダナオ島でアマチュアロックバンドのメンバーとして活動していたところをスカウトされ、メジャーデビューしています。

TJ Monterdeは3枚アルバムをリリースしています
こちらで・・・

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