本日のお奨め 2015年5月12日

■フィリピン産AORここに極まれり!の1枚~Marco Sison

Marco Sison / Hindi Ko Akalain
フィリピンではAOR系やブラックコンテンポラリー系のメロウでスイート、ちょっとお洒落なサウンドが最も好まれています。1980年代から脈々と続くその流れの中で数多くのシンガーが名曲を残してきましたが、当時から活躍しているシンガーも少なくありません。本日お奨めにピックアップするのはそんなベテランAOR系シンガーの一人Marco Sisonが2010年にリリースしたアルバムです。
Marco Sisonがデビューしたのは1978年、以来ソロやボーカルグループで活躍してきました。メジャーレーベルとレコーディング契約はあったもののどちらかといえばステージ活動がメインだった彼、アルバムがそれほど多くないのが残念ですが、2010年のアルバムHindi Ko Akalainは久々のアルバムにして、フィリピンAORの総決算とも言える好盤です。
作曲・プロデュースを手がけたのは80年代からOPM・フィリピンAORの屋台骨を支えたOdette QuesadaとBodjie Dasig夫妻。レコーディングもBodjie Dasigが良く使っていたロサンゼルスのスタジオで行われています。
収録曲でなんといっても注目はアルバムタイトルソングのHindi Ko Akalain。都会的な哀愁を帯びたメロディは正に大人のロック。アメリカ発祥のAOR(アダルトオリエンテッドロック)に触発されてシンガーとなった彼の一つの到達点とも言える出来栄えの1曲です。
このアルバムの中には90年代初頭にOdette Quesadaが作曲したA Friend Of Mineも収録。この曲もフィリピンAORの名曲として歌い継がれていますが素朴で若々しさのあるこの曲とHidi Ko Akalainの苦みばしったような大人の魅力が一つのアルバムに収録されていて、フィリピンポップスの一つの歴史を垣間見れる1枚となっています。

また、この作品は長年プロデューサーとして活躍していた故Bodjie Dasig氏(2012年没)の遺作ともなる作品で彼のサウンドの集大成としても心に留めておきたいアルバムです。